http://www.kana-rou.go.jp/users/kijyun/az_haken_kaikin_aneikakuho_point_4_1.htm
労働安全衛生法とはどんな法律なのでしょうか。わかりやすいキーワードは次のようなものです。
「労働災害防止」「健康診断」「安全衛生教育」「安全衛生委員会」「安全管理者」「衛生管理者」「作業主任者」などなど
他にもたくさんありますが、一部を取り上げました。これらについて規定しているのが労働安全衛生法です。少しはイメージがつかめたのではないかと思います。
ここでは労働安全衛生法の第1条から、偽装請負の問題点を考えてみることにします。
労働安全衛生法に限らず、法律の第1条には目的が記載されています。これを目的条文といいます。目的条文である第1条をみてみます。労働安全衛生法の第1条は以下の通りです。
「この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。 」
ちょっと長くてわかりにくいですね。そこで第1条の一部をピックアップしてみます。
「危害防止基準の確立」
「責任体制の明確化」
「自主的活動の促進」
これら3つのうちの1つである「責任体制の明確化」に着目します。さらに、第1条には
「労働者の安全と健康を確保する」
とあります。「責任体制の明確化」「労働者の安全と健康を確保する」の2つに着目し、これらをつなげて文章にしてみます。
「労働者の安全と健康を確保するために、責任体制を明確化しなければならない」
すなわち、
「労働者の安全と健康を確保するために、責任の所在を明確にしなければならない」
これが労働安全衛生法の目的の1つであると言うことができます。労働安全衛生法は、労働者ではなく事業者が責任を負うことを規定しています。では、労働安全衛生法上の責任を負うのがどこなのか、請負と派遣それぞれについてみることします。
通常の請負では、労働者に指揮命令をしているのは請負業者です。労働者に指揮命令をしている請負業者が責任を負います。労働者に指揮命令をしていない注文主は、責任を負いません。注文主は労働者に指揮命令をしていないので、注文者が責任を負わないのは当然といえます。
一方、派遣では、派遣元企業・派遣先企業の双方が責任を負います。労働者を雇用しているのは派遣元企業で、労働者に対して指揮命令をしているのは派遣先企業ですので、派遣元企業・派遣先企業の双方が責任を負うのは当然といえます。
派遣先企業・派遣元企業それぞれがどのような責任を負うのかは次のHPを参考にしてください。
http://www.occn.zaq.ne.jp/personel/rouki-aneihou.htm
松山社会保険労務士事務所 -
労働基準法・労働安全衛生法等の適用について派遣元・派遣先が責任を負う事項
労働安全衛生法の部分だけを見ても、派遣先企業が負わなければならない責任がたくさんあることがわかると思います。請負では、これらすべての責任を請負業者が負うことになり、注文主は責任を全く負いません。
労働安全衛生法上の責任を負うのがどこなのか、請負と派遣についてみてきました。では、偽装請負はどうなるのでしょうか。
請負であるとすれば、注文主は責任を負いません。しかし、労働者に指揮命令をしているのは注文主です。指揮命令をしているにもかかわらず責任を負わないというのは、明らかに問題です。指揮命令をしている以上、注文主も責任を当然に負うべきです。しかし、現状では請負という名目から注文主は責任を果たしていません。一方、請負業者は指揮命令をしないため、仕事の内容を把握するのは困難です。仕事の内容を把握できなければ、責任を果たすことは望めません。
以上から、偽装請負ではこのような状態になります。
「注文主は責任を負わない(負おうとしない)」
「請負業者は責任を負えない(負うことができない)」
偽装請負では、注文主も請負業者も責任を果たしていない、すなわち、責任の所在が明確にならないのです。責任の所在が明確にならない以上、労働者の安全と健康を確保することはできないと言わざるを得ません。
偽装請負は、労働者の安全と健康が確保できないことがわかったのではないかと思います。指揮命令はしたいのに労働安全衛生法上の責任は負わないというのでは、あまりにも無責任です。これでは労働者を保護することはできません。偽装請負問題を議論するときに、労働者を保護する視点を決して失ってはいけないのだろうと思います。
(2006.10.21 更新)
「偽装請負」問題リンク集を更新しました。
http://www.office-win.net/gisouukeoi.html