2006年10月20日の「偽装請負」問題を考える
でお話しました。労働安全衛生法の第1条を見てきましたが、今回は少し違った角度で考えたいと思います。
労働安全衛生法の第1条は以下の通りでした。
「この法律は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」
ここでは、「労働基準法と相まって」に着目してみます。
労働安全衛生法は、1972年に労働基準法から分離する形で制定されました。このとき、労働安全衛生法と労働基準法の関係を明らかにするために、次のような通達が出されました。
「労働安全衛生法は、形式的には労働基準法から分離独立したが、安全衛生に関する事項は労働者の労働条件の重要な一端を占めるものであり、労働安全衛生法と労働条件についての一般法である労働基準法とは一体としての関係に立つものである。」
これを要約してみると、
「労働安全衛生法は労働基準法から分離したが、労働基準法とは一体の関係にある。」
と言えると思います。まさしく「労働基準法と相まって」、労働安全衛生法は存在しているのです。
それでは、労働基準法について簡単にみてみます。労働基準法の第1条および第1条第2項は以下の通りです。
「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」
「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」
労働基準法は、社会的経済的に見て使用者(企業)に対し弱い立場にある労働者を保護することを目的としています。すなわち、労働安全衛生法も労働者を保護することを目的としているのです。
労働安全衛生法に違反する偽装請負は、労働者が保護されない恐れがあります。労働者は企業よりも弱い立場にあります。この点を留意しなければならないと思います。
偽装請負は、労働安全衛生法だけではなく職業安定法や労働者派遣法に違反していると言われています。これらはいずれも労働法です。労働法は、労働者を保護するためにある法律です。時代に沿った法改正は必要だと思いますが、企業よりも弱者である労働者を保護する視点は常に必要なのだろう思います。
「偽装請負」問題リンク集を更新しました。
http://www.office-win.net/gisouukeoi.html