どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?
タイトルが衝撃的ですが、現在の将棋界のありようがわかる本です。特に、タイトル戦に登場したトップ棋士の本音がたくさん載っていて興味深い内容が満載です。その中で、トッププロと若手との共同研究について感じたことを少し書きたいと思います。
トッププロと若手との共同研究について、今の時代の重要性を明らかにしているとともに、若手の研究情報をトッププロが収集していることが搾取に当たるのかどうかについて問題提起がされています。搾取にはあたらずトッププロと若手との関係は対等である旨の深浦九段の話が記載されていました。
トッププロが若手との共同研究により若手の研究情報をトッププロが収集するというのは今に始まったことではなく、17年前に米長九段(当時)が中原名人(当時)から名人を奪取したときの大きな要因であると言われています。米長永世棋聖は当時、森下九段のことを「森下先生」と呼び、若手に教えを請うという姿勢で若手と共同研究をしていたと記憶しています。
米長永世棋聖は、名人を奪取した後のテレビ番組で(たしか徹子の部屋だったと記憶していますが)、若手の研究情報を収集しているだけではなく自分のもっているものを若手にも提供している旨の話をされていたように記憶しています。
このように若手の研究情報を収集するということは17年前には既におこなわれていました。17年前と現代では情報の質において比較にならないかもしれませんが、それを当時から積極的に採用した米長永世棋聖には先見の明があったことがうかがえます。